意識は持ち越せるけど、経験と知識はバツよね
「今度の願い事は何なの?」アンズちゃんが言った。そう、アンズって、その女の子の名前よ。
「時間と世界の問題は解決したし、わたしが、どんな人間として生活するかは、その都度、自分で決めてアンズちゃんに要求する。それでね、一方の世界から他方の世界に移ったとき、前の世界の意識は残ってるの?」わたしはアンズちゃんに尋ねてみた。
「あら、春奈さんて、変な人!意識が残ってるから、おもしろいんでしょう。だって、別の世界に移ったとき、ワクワクしたいでしょう。仮に、前の世界の意識が、ぜんぜん残っていなかったとしたら、その都度、それだけよ。ただ、別人として二つの世界を交互に生活して戻ってくるだけ―。ということは、本当の別人と同じことになるわ。でも、春奈さんが、そうしたいって言うのなら、別にかまわないけど・・・」アンズちゃんが、呆れて言った。
「まあ!わたしってバカね。確かにアンズちゃんの言うとおり―。わたし、やはり意識を残すことにする。じゃあ、そういうことにしてちょうだい」
こうして、何とか、これからの方針を決めることができたんだけど、もう一つ、疑問が残ってたので聞いてみた。
「意識は残ることになるけど、前の世界の人の経験や知識は、別の世界に持ってこられるの?たとえば、40歳の人って、今のわたしと違って、ずいぶん知識や経験が豊富じゃない。それらを、高二のわたしが今の世界で使えるの?」
「そうしたければ、そうしたら―。でも、それって、かなり卑怯な気がするわ。だって、別の世界で別人になったんだったら、経験と知識は、そこだけのものでしょう。だから、そもそも別人になりたいんでしょう」
「なるほど」わたしは納得した。これで、やっと方針が固まったので、あとは、向こうの世界で、どんな人間に生まれ変わって生活するのかを考えるだけになった。そしたら、わたし、ほっとして、前よりいっそうワクワクしてきた。
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